
| ポール・ブーハーは自分自身を心配していた。最近自分の心は湖の傍のキャビンや釣竿、ロッキングチェア、暖炉の傍のバーボンのボトル、つまり休暇を思い浮かべていた。同様に残りの数日のことを考えるのをやめようとしたがそれもだめだった。ブーハーはまだ大人になってから一度も休暇が取った事がなかった。休暇は危険だった。休暇に行き、戻ってくるともはや自分の居場所がないことが多々あったからだ。若かった頃は時折他人の休暇をそうして利用していた。だが、いまはもう徐々にではあるが平和と静寂への願望があった。 ブーハーはその考えを捨てそれを時差ぼけのせいにした。まだ大西洋横断中だ。しかし、その思いはいっそう強くなった。昨夜彼は真剣にシカゴに滞在することを考えてみた。会議のためにロンドンにいる必要ない。代表者が簡単に電話で自分に報告できるはずだ。自分自身に旅行するよう説得するために1時間を要した。疑いの余地はなかった。ブーハーは車の速度を落としていた。もうすぐ真夜中でペレフォードにリムジンが着く時間だった。ジョージは今までどおり歓迎を微笑で表しながら玄関の側で立っていた。 「ジョージ、元気か?」 fブーハーはコートを渡した。 「とても」 と執事は答えたが、隠し切れない重大な顔つきがあった。 「ほんとか?」 「ほんとでございます」 ジョージは少し顔を赤らめてブーハーを応接室に導いた。 「ただ・・・ぼっちゃまがまったく元気がないのでございます」 「目が覚めているか?」 「はい、あなたにお会いになりたがっています」 ブーハーは執事が部屋を去るのを見た。すぐに彼は思った。すばらしく流行おくれの言葉。しかしそれからジョージはすばらしく流行おくれのイギリスの執事だが元気だったことを思った。いまだ元気・・・。ポール・ブーハーがその年齢でまだ元気でいられるだろうか。彼はソファーの上に自分を広げて目を閉じた。ブーハーが再び目を開くと、少年が好奇心を持って自分を凝視しながら横に立っていた。 「疲れているようだね」 と少年は言った。 「老いという名の私の友人が結局我々すべてをだめにする」 「ん・・・」 その声はあいまいだった。 「疲れすぎてて会議について話せない?」 「もちろん、そんなことないさ」 ブーハーは立ち上がり、自分のブリーフケースに手を伸ばし、少年に報告書をはじき飛ばした。少年はそれをじっくり読んで見上げた。 「これで・・・サイモンはだれが出てきてもすべて阻止するだろうね」 ブーハーはうなずいた。 「そしたら会議は解散するだろ?」 「ああ」 「だけどこれじゃ単に現状から我々を遠ざけるだけだ」 そのトーンはいらだっていた。 「え?」 ブーハーは当惑しているようにだった。 「僕らが欲しいのはこれだ。今まで常に僕らの戦略だっただろ。分裂と規則。カオスに王手をかけてカオスを再びコントロールするんだ。僕らが自分たちのポジションをキープするために」 と少年がとげとげしく言った。 「何に向かっての進歩なんだ?」 ブーハーは憤慨しながら聞いた。 「破壊に向かってだ」 少年はブーハーの顔の後ろに紙を弾き飛ばして、向きを変え、部屋から立ち去った。ブーハーは少年が行くのを見ていやいやながら昔の日々について考えため息をついた。少年の父親は謎めいた話を一度もしたことがなかった。彼と一緒になら働くことができた。 なんだったのか分からない夢で睡眠が妨げられブーハーは朝早く目覚めた。シャワーを浴び、服を着ながら彼は夢の映像の光景を回避しようとした。それはいまや年取った顔で傾いた体だった。まだ眠気が覚めていなかった。目は粘つき息も臭かった。ブーハーは洗面器の中に唾を吐いてあくびをぐっとのみながら部屋を出た。あの少年の部屋へ行き彼は軽くドアを叩いた。何の音もしなかった。犬がくんくんと鼻をならす音さえ。ブーハーはドアを開けて内部を凝視した。ベッドが納まっていた。シーツはねじれ枕は床の上にあった。モンタージュ写真のようにその光景を捉えると彼はドアを閉じようとした。彼は目を細めた。何かが少し違っていた。彼は部屋の中に踏み込んでそれを見つめた。ケイト・レイノルズの墓の写真の横に一連のカラー写真があった。最初は黒いチャペルで若い女性が裸で横たわっていた。死者の大きな茶色い目が無表情に上の方を凝視していた。その次の2番目は最初の腐敗段階の体の写真。それからもう一枚、4番目も。 ブーハーは震えながら壁にもたれかかった。 彼の手が写真の中で震え、その中の一枚が床にひらひらと舞い落ちた。それからブーハーは吐き気と闘いそれを激しく飲み込み、つまずきながら部屋から出た。ブーハーはドアを閉めて自分を落ち着かせようとしながら廊下に沿って移動した。チャペルのドアで犬が彼を見上げて横にのいた。ブーハーは再びドアを叩いた。手は冷たく湿っていた。そして自分は中に何があっても見ることを耐えられるかどうかと考えた。けれども中に入らなければならなかった。何が起こっていたかを知る必要がある。何も音はしなかった。ブーハーはゆっくりとドアを押し開けて中に踏み込んだ。ちょっと時間をかけて焦点を合わせると、父親の写真を握り締めながら目は後ろの彼を凶暴に見つめる少年の発狂した顔が目に入った。汗がブーハーの顔に流れ落ちた。 ブーハーはこそこそと息をこらして部屋をざっと見回したが、ここには何も新しいもの、猥褻を追加するものはなかった。 「ポール」 少年の吼えているようなノイズの声は彼を驚かせた。ブーハーは従順に後ろの出入り口に後ずさりした。 「ほっといてくれ」 ブーハーは少年が言うとおりに後ずさりしてドアを閉め、自分から出て行った。 応接室でブーハーは自分の酒を注ぎ執事を呼ぶためにベルを鳴らした。スパニエル犬のように頭が傾いた年老いた男がすぐやってきた。 「来訪者について何か知ってるか?若い女性は?」 老人は再び心配しているように見えた。 「ただ車が一台あっただけでございます。若旦那様は私にその車を運転してなかったものにするように指示なさいました。私はそれが若い女性の物だと確信しております。」 「なぜ私に話さなかったんだ?異常があったら何でも報告しなくてはならないことは知っているだろう?」 「ぼっちゃまがそれは言わないようにとおっしゃいましたので・・・。ぼっちゃまはもう私が服従しなかったかどうか知っているでしょう。」 老人は話を中断して肩をすくめた。 「ぼっちゃまは私が話してたことがすぐ分かるでしょう。秘密はないのです」 ブーハーはうなずいて自分の手を振り回し解雇のジェスチャーをした。ジョージはためらった。 「ぼっちゃまがご立腹でないといいのですが・・・」 ブーハーは微笑んだ。 「私は長く生きられないでしょうが、いつでも忠実にしてきました。ぼっちゃまが永遠に信心することを私に宣告しなでいただけたら・・・」 ブーハーは微笑み返した。 「だめだ。彼にそれはできない。それは彼の向こうにある一つのパワーなのだ。お前の魂は間違いなくのろわれた老人だ」 「はい」ジョージは言った。「そうでございましょう」 ブーハーは少年を待ちながら芝生とその向こうの森を見つめた。その場所は静かだった。何も動かなかった。風はなかった。ブーハーは家から出て一人きりでそこへ行きたかった。少年が入ってきたのが聞こえず、自分の名前を呼ぶ声でびっくりして向きを変えた。少年はすでに気持を落ち着かせていたが、顔は疲労で灰色だった。 「具合が悪いのか?」 ブーハーは尋ねた。少年は頭を振った。 「ヤツだ。どこでもヤツを感じる。ヤツの影響。ヤツの神聖な力」 少年は椅子にドサッと座ってため息をついた。ブーハーは珍しく保護しなければと感じて少年に近づいた。少年は結局のところまだ自分の運命を選択していなかった。しかし、なぐさめようと手をのばしながら言わねばならないことがあることを思い出した。 「ちょっと問題がある」 少年はブーハーを見上げた。 「君がフィリップ・ブレナンについて話すのを聞いた」 少年は目をそらしてそして鼻をすすった。 「思うに・・・彼は・・・問題ないよ、ポール」 と軽蔑するように少年が言った。 「彼は自滅するだろう」 少年は淡々として言った。ブーハーは頷いた。理解すべきだった。自分にどんな危険があったときでも少年は知っていた。そしてそれに従って行動した。保護しなければという感じはすでに不適切だった。ブーハーが思い出したことは・・・ 「あの女は誰だ?」ブーハーは尋ねた。 「壁の上の写真だよ」 少年は肩をすくめた。 「ヤツがここに送ったんだ。小鹿みたいだったよ」 「キリストか・・・」 とブーハが言った。 「みだりに言うな!」 と少年がブーハーに鋭く言った。 「で、体はどうした?残ってるのか?」 「処分したよ」 と少年は微笑みながら言った。 「こんな仕事が結局自分の血統なんだ」 ブーハーの手は硬く握り締められ爪が食い込んだ。ブーハーは少年の上に立ち睨み付けた。 「それは暴挙だ」ブーハーは言った。「それは・・・」 ブーハーは単語を探した。 「・・・・侮辱だ。君の父はけしてこんなに低俗な方法で自分の手を汚すまで身を落とさなかった」 ブーハーの顔は怒りで赤くなった。 「君の父は・・・」 少年がブーハーに飛びついた。 「黙れ!」 少年が鋭くいい放ちブーハーを押のけたのでブーハーはソファーに躓いて倒れた。 「父の話をするな!」 「彼はけしてこのようなことをしなかった」 ブーハーは主張し続けた。 「すべてある理由のためになされた。方法があった。君は破壊のこと話すが君の父はコントロールの話をした。すべてはコントロールしようとしてなされたことだった。世界とその人間の魂を・・・」 「何?」 少年がとげとげしく言った。 「父がお前の心の狭さを気にかけたと思う傲慢さがお前にあるのか?お前の惨めな精神に対してどんな興味を持っていたと思うんだ?」」 .ブーハーは指からリングを引き抜いて少年の顔の前に投げつけ6の集まりを指さした。 「『そして彼は小さき者にも大いなる者にも、富める者にも貧しき者にも、自由人にも奴隷にも、すべての人々にその右の手あるいは額に刻印を押させ、その刻印がない者はみな、物を買うことも売ることも出来ないようにした。』」 ブーハーは足を伸ばし背を伸ばして立ち上がった。 「ヨハネの黙示録だ」彼は言った。 「買うか、売るか。コントロール。そうするように我々は働いてきた。彼が・・・」 「子供だましだ」 少年は唾液を噴出しながらブーハーに言葉を吐き出した。 「引用はやめろ!お前は残った者のように騙されやすいヤツだな。天使が追い出された時、ただ単に1つの避けられない結果があった。そしてそれが破壊、甘い復讐だったのさ」 少年は微笑んだ。 「復讐は僕のものだ!」 少年がブーハーをつつき、あざけりながらその周り歩いている間、ブーハーは動けずに立っていた。 「2千年で十分だったと父は言った。お前はコントロールの話をする。選択の自由について哲学者のような無駄口をたたく。父とナザレの間から選択するのは自由だと。なぁポール、残された一つの自由がある。おまえは自分の企みで生き残りと完全な破壊で人間が選択するのを手伝った。お前は溝に近づく主要な人類をその鼻で助けた」 少年はブーハーの顔をつねった。 「一ひねりで・・・ヤツはいなくなる・・・」 少年は微笑し向きを変えて部屋を去った。ブーハーは少年が笑いながら犬を呼び出しているのが聞こえた。その足音次第に静まるまで待ち、それからホールに移動してゆっくりと階段を上って少年の部屋の外で止まった。少年が動き回っているのが聞こえ、犬の臭いがした。息をこらしてブーハーは礼拝堂に向かって廊下に沿ってつま先で歩き、静かに中に入った。一瞬の間動かずに立っていてそれからダミアンの死体に近づいた。彼はひざまずいて学生時代に一緒に遊んだ紙粘土に手を伸ばした。 「ダミアン」ブーハーはささやいた。「私が呼ばれたときからずっと、私はおまえの父の王国が来るように働いてきた。必然の勝利の見込みを喜んでいた。私は今まで忠実だった」 ブーハーは指を愛撫した。 「おまえの身体の生命が消されたとき、おまえの魂に祈り、おまえはそれに答えてくれた。私に絶望するな、まだ私の時は来ていないのだと言った。おまえは私の祈りに答えてくれた。おまえの復活を信じることを私に要求しながら。そして私はおまえの左手に座った。また話してくれ。我々がしてきたことを。それは破壊ではなくコントロールだろ、ダミアン。」 ブーハーはお辞儀をして黙ってひざまずいた。まるで指示を待ちうけるように。それから鎮圧された混乱の音でシャフトのように頭をすばやく上げた。ブーハは向きを変えた。明かりが入り口から来ており、そこに少年と犬が立ち彼を見つめていた。 「何をしている?」 少年の声は平らで無感情だった。 「指示を求めている」 「それなら他のところで求めろ。僕の元に父を残して」 ブーハーはひざが割れている状態で立ち上がった。 少年はブーハーを通すために横に立った。そしてとブーハーは困惑、敗北、そして非常に老いたように感じながら、ゆっくり後方へ着た道をふらふらと戻っていった。
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