
| ジェームズ・グラハムの死はブレナンを震感させた。
それを聞いたのは午後だった。 最初の死傷者数は38人、扶養者は100以上と記録されていた。統計にはぞっとしたが、感情的な反応を喚起するのが難しいと気付いき、そのようなことが起こりえたという単なる嫌悪を感じただけだった. だがグラハムのショックは本物だった。 学生時代から、年を追うごとに彼を崇拝してきた。彼を批判するものは沢山いた。職業政治家とプロの皮肉屋は、この老人が現実に疎い弱者への同情を大袈裟に示す自由主義者にすぎないと主張したが、ブレナンはもっとよく知っていた。 二度彼に会って、彼がユーモアのセンスと国際政治に関する知識で質問者たちを和らげるのを見た。 ソビエトの手管のキャンペーン運動で彼を疑う試みもあったが、その時でさえ彼はよく信頼されよく働いた。 フィリップ・ブレナンにとって、ジェームズ・グラハムは彼が出くわした聖者の中で最も親しい人間でおまけにユーモラスな聖者だった。それが今や別の事故の犠牲者として死んでいる。 ブレナンはマーガレットに電話して今夜は帰るのが遅くなるからと言って彼についての主なニュースをビデオに録画するように頼んだ。ブレナンが車から出てくる時にドアのところでマーガレットに会った。 「あなたバテてるみたいね」 「バテてる?お言葉だね」 マーガレットは厚化粧が不要な「どこにでもいる女の子」と彼女がそうよんでいるジーンズとTシャツ姿だった。 廊下でキスをして、ブレナンはマーガレットの温もりを感じながらしっかり抱きしめた。マーガレットがいやがったが、彼はそれを望んでなかった。セックス抜きのある種の安らぎが必要だったのだ。マーガレットの拒絶の表情が見えないように顔を背けブレナンはやさしく彼女を押しのけた。 「ニュースを見たかい?」 ブレナンは尋ねた。 「ええ。かわいそうな馬たち。」 ブレナンは、ぎょっとマーガレットを見つめた。 「かわいそうに--何かに狂わされたのね。」 「なんだって、マーガレット。」 マーガレットは肩をすくめて、台所に向い 「食前のビールを持って来るわね。」 と振り向きざまに叫んだ。 ブレナンは、マーガレットが行くのを見て、それから自分の書斎に行って、ニュースビデオのスイッチを入れた。 最大の悲劇の報道が長時間にわたった。ブレナンは目の前にフラッシュするシーンを見つめた。犬がグラハムの顔へ行ったときはたじろぎ、 そして、老人が演壇で引きずり降ろされたとき、心ならずも、目をつぶった。馬が飛び出し始めたとき、ニュースキャスターがしゃべりだし、そのようなことが起こったのは、首都警察の歴史で初めてであると言った。 馬たちは睫毛に何かあってもまばたきひとつしないように訓練されているので現在調査中とのことだった。 ブレナンは20分間視聴しそれから再び番組をざっと流した。カメラが群衆をちらっと写したとき、彼は、瞬きして、映像のひとこまに凍りつき、ボタンを押して、円柱の側に焦点を合わせて、別のボタン押して、必要な箇所をクローズアップにした。 ブレナンはスクリーンに身を乗り出して見つめた。ポール・ブーハーが集会で一体何をしている?あのような男が興味を持ち続けることができるものはなんなんだ? ブレナンは、再びテープを動かして、少年が台座から飛び降りてブーハーの腕を掴んだところで、テープを止めた。再びブレナンは凍りつき椅子に深々と座った。あの顔はどこかで見たことがあるのではないかと思い始めていた。そして誰だったか思い出した・・・それはダミアン・ソーンの顔だった。大使館の肖像より若いたった15歳かそこらだった。 「なんてこった」とブレナンはつぶやいた。 「何をしてるの?」 ビールを手渡したマーガレットの声は好奇心で鋭かった。ブレナンはスクリーンをパッと消してマーガレットを見上げた。彼女には言えなかった。 「ただ痒い所をかいてただけ」 とブレナンは微笑んで言った。彼女には言えない。自分が狂ってると思うだろう。単に馬についてだけを心配したものにはとても言うことができなかった。 午後の日差しが高くなり、外務省ビルのブラインドを通して大きいマホガニーテーブルのまわりで葉巻の煙を細かく切っていた。1時間ほど代表者たちはスピーチをしたり聞いたりした。その課題に関する主題は何度も繰り返されている問題だった。現在平和維持軍の手にあるゴラン高原の所有についてのことだ。ピーター・スティーブンソンは微笑みながら非妥協性に直面しても穏やかなままでいようと懸命につとめていた。 「紳士的に、紳士的に」 とつぶやき、テーブルの上で軽く指をたたいていた。イスラエル国会からの3人の男性が冷静に見つめる中、2人のシリア代表が声をそろえて怒り声でしゃべっていた。 「紳士的に願います」 しばらく間があった。アラブ人は息を切らしているようだった。その間に、低い声が押し入った。 「よく考えませんか?」 フィリップ・ブレナンが言った。 「校庭で子供たちがするような口論じゃなくて大人の方法で提案を検討してもいい時でしょう。」 各々の顔がブレナンに振り向き、詮索好きに見える通訳を必要な者たちはそれぞれいろんな驚きの度合いを示した。2人のシリア人は立ち上がって、ブレナンを見て大笑いした。 「どうか紳士的に」 スティーブンソンの声はいらだちでかすれていた。沈黙を求めたが、注目されなくなった。イスラエル人の一人が自分の席から叫ぶのに加わった。 ついに、スティーブンソンは小槌の方に手を伸ばし、激しくテーブルにたたきつけた。 「会議を30分休止します」 と言って彼は立ち上がり、自分の書類を集めて、ブレナンに素早くいらだちの一瞥をして部屋を出たのを数人が気付いた。オブザーバーに対して前代未聞の邪魔だった。 通路で、英国代表派遣団の2人のメンバーは、眉をつり上げて、聞こえよがしの私語をつぶやいた。 「ヤツは酔ってんじゃないのか?」 「そうに違いないね」 ブレナンは、彼らの後ろに行き、頭を一緒になぐり倒したくなったが、我慢して、コーヒーマシンの方へ行った。ブレナンがカップにコーヒを注いでいると、1人のイスラエル人が後ろに来た。 サイモンという小さい男で不正な外交とパワフルで知られていた。 「タイムリーな干渉だったね。ブレナン」 と、サイモンが言って微笑んだ。 「何が起こったか僕にはわかりませんけど」 と、ブレナンが言ってにやりと笑った。 サイモンは肩をすくめ 「一休みできてみなうれしいと思うよ」 と言ってブレナンを壁に引き戻した。 「今日、ポール・ブーハーと話したんだ。君が彼に昨晩連絡をとろうとしていたようだと言ってたんだがね。」 ブレナンは頷いた。 「君に折り返し電話しなくて申し訳なかったから今夜7時くらいに彼のオフィスで一緒に飲まないかって言ってくれって頼まれたんだ。」 「伝言をありがとう」 とブレナンは言った。 サイモンは微笑んで側を離れ、ブレナンは彼を見ながら、この小さい男がなせブーハーのためにメッセンジャーの役をしなければならないのかなんとなく不思議に思った。 「フィリップ、来てくれてうれしいよ」 ブーハーの握手は堅かったが、ブレナンは彼の表情の中に変わらぬ日焼けの下に潜む不健康な青白いシミを検知できそうだと思った。 飲み物が注がれた後に、世間話の前置きで、ブーハーは、昨夜の呼び出しに答えなかったとを謝った。 「とんでもないです」 とブレナンはにこやかに言い、からかい半分で言った。 「ちょっとテレビであなたを見たんで、同情しようと電話したんです。」 一瞬ブーハーの顔が不可解なしかめ面になった。 「あんなものすごい事件の場にいたんだから恐ろしかったに違いないと言おうと思っただけですよ。」 「電話したのはそれがだけか?」 ブレナンは頷いた。 「単なる激励です。」 とブレナンはグラスをちらっと見た。 「あなたのウィスキーを無駄にするに値しないですね・・・」 ブーハーは微笑んだ。 「いや、いつでも大歓迎だよ」 再び彼らはとるにたらない世間話をした。知られてしまうだろうスティーブンソンの会議に関することを。 ブーハーはブレナンのグラスを指さしたが、ブレナンは帰らなければと言って辞退した。 ドアのところでブレナンは振り向いた。 「ポール、あなたといた少年は誰ですか?」 するとブーハーは不機嫌な顔をした。 「少年ってなんだ?」 「テレビであなたが少年と話しているように見えたのですが。」 ブーハーは再び肩をすくめた。 「いやあ、知らないな。きっとただの子供だと思うよ。あんな群衆の中だ。どんなだか君にもわかるだろう」 「そうですね。 ごちそうさまでした。」 ブレナンは納得しないままビルを後にした。そして帰る途中に自問したが適切な答えが得られなかった。確かに自分は奇妙な行動をし続けていた。会議の中断は自分らしからぬことだ。今までずっと、ちゃんと答えには注意してきたのに。こうレポートされるだろう。ブレナンは優れた組織者ですばらしい分析力の頭脳を持つが、セルフコントロールに欠ける傾向があると。もし行動を慎むように言われていたらいざこざを起こしていただろう。 小さいことだったが、外交ではちょっとした行動が大事件に通じるかもしれないのだ。 他の多くの友人や同僚と違って、ブレナンは自己分析に走らなかった。まったく自分に興味がなかったが、最近精神不安定の兆候に気がついていた。時折理性のない怒りの行動と忘れっぽい瞬間があった。そして肉体的な証拠もあった。目の下のクマと絶え間なくまぶたが落ちてくる眠気だ。もしかしたらが気付いているのかもしれないが、マーガレットは何も言わなかったし、そして、スタッフもそれを指摘することはなかった。しかし、彼の妻も彼の同僚も愚かではなかった。きっと気がついていぶかしがっているにちがいない・・・。 家に帰るとブレナンは真っ直ぐ書斎に行き、テレビのスイッチを入れた。未だにトラファルガー広場の災難の場面になっていた。ブレナンはボタンを押して2つのことを満足のいくまでテープを巻き戻したり早送りしたりした。少年がダミアン・ソーンに生き写しだったこと、そしてブーハーがその少年を知らないと嘘をついたこと。 それはパズルだった。ブレナンはブランデーのボトルに手を伸ばし、考えても拉致が空かないと思った。まだブーハーにダアン・ソーンの埋葬について聞いていなかった。少なくともその真相は暴かれていなかった。 ・・・とにかく直訳というか勘訳でざざっと訳して自分が先を読むため ひたすらつづきます |
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