第1部

第8章

ローマからロンドンへのシャトルフライトで窓の側に席を取ったマイケル・フィンは司祭との会話を思い出し、考えをまとめようとした。ブリーフケースに手を伸ばして、再びデ・カルロがくれたメモを見た。脳の一部がそれに拒絶反応を示した。そしてその包みを飛行機の後部のトイレに持っていって流した。青い 渦巻きの中でそのメモが消失するのを見てそれについてすべて忘れ、ロンドンから家路へと向かった。

しかし、彼は聖書に手を置き約束させられていた。フィンはため息をついてブリーフケースの中で寄り添っている2つの手紙をぼんやりと見つめた。確かにラモントという女性は狂人だし、もう一方は末期症患者だ。デ・カルロはおそらくもうろくしたんだろう。それでもダミアン・ソーンの死体がその墓にないという事実は少なくとも調査する価値があった。

 フィンは聖書とノートに手を伸ばした。生涯の研究がすでに彼に聖書に対する詳細な知識を与えていた。適切な引用文を見つけ出すのはいとも簡単だった。道路地図を調べているドライバーのようにぶつぶつ言いながらページをパラパラと通し読みしたので、隣の女性たちが席を替え心配そうに彼を眺めた。
 「聖年は50年目ごと」
とフィンはつぶやいた。ノートに殴り書きしながら新約聖書にしるしをつた。
 「なぜなら最後の日、国民が国民に、王国が王国に対して立ち上がるべきだからだ」
と彼は独り言を言い、再びページを親指でめくった.
 「それらのことがすべて起こるまで、この世はけして滅亡しないだろう」
フィンは鉛筆を下に置いて青年期を思い起こして目を閉じた。それは普通の宗教の授業の時だった。成人になってからは生活のほとんどすべて歴史の研究に没頭していた。科学者の好奇心で結果的に信心深い男だった。けして矛盾が見出せない2つの要素があり、眠りに落ちるにつれて時折彼をしつこく苦しめた。あの恐怖が付きまとい始めたのだ。その恐怖とは環境破壊反対派とカサンドラが正しく、聖書の予言が現実のものとなろうとしているというものだった。アンチキリストが生きている。年取った司祭は復活したキリストに会っている。もし、デ・カルロが精神異常者でなかったら最終戦争が間近にあるのだ。

税関と入国審査局を通過すると、彼の心はとるにたらないつまらなことに囚われた。どうしよう、タクシーに乗るべきかそれとも地下鉄に乗るべきか。どのホテルにしようか。最初に電話かけるのは同僚の誰にしようか。フィンは手荷物を取り上げてコンコースを通って新聞スタンドで立ち止まり、ポケットの中のイギリスコインを探した。国際的なヘラルド紙は目立つようディスプレイされていた。フィンは新聞を取るために石に向かうかのようにかがんで止まった。それからゆっくりと新聞を棚から取り独り言をつぶやきながら姿勢を戻した。彼が通路をふさいでいたため周りの旅行者が通れなくなって苦情を言っているのにも気づかずに。

警部補の言葉が引用されていた。殺人は病的なものでいったいどんな人間がが生きた人間、病理学者の話では転倒で首を折ってまったく麻痺していたであろうという人間を埋葬しようとしたのかと頭に浮かんだと。
 「なんてこった」
フィンがつぶやき膝がガクンと曲がったのを感じた。周りの人々が彼を助けあげて大丈夫か、医者が必要かとたずねた。

ピカデリィーの近くの小さなホテルにチェックインしたフィンは家に電話をかけた。自分が思い出せる以上にやさしく愛情深く妻に話した。そして受話器を置いた時、たぶん妻が罪悪感で電話をかけたと思って疑っているなと思った。家に戻ると、フィンは妻を腕に抱き、妻がが自分にとってどんなに意味があるか話そうと思ったが家にいて待つことができなかった。しかし、最初に守るべき約束があった。
 
フィンはロンドンをぶらぶら歩くことにした。いつもは新しい都市に魅了されるのに、集中することができなかった。トーマス・ドゥーランの顔は彼の心に割り込み続け、いやいやながら自分のために願いを聞き入れた彼の、そして昨夜のまるで酒を飲みすぎたかのように不安げで興奮した不明瞭な彼の話声が聞こえ続けた。
 フィンは頬に涙を感じそれを拭い去った。自分は罪深く男の死に責任があるように感じた。フィンは自分の目を拭いて今どこにいるか知ろうとして見上げた。彼は教会に立ち寄っていた。ドアは開いていた。考えなしに彼は内部をあてもなくさまよった。座席にひざまづきながらどうしたらデ・カルロとの約束を守れるか考えた。あの短剣は手に入れることができない。もし、それが博物館か私的なコレクションにあったらチャンスがあったかもしれないが。彼は消えた少女のために祈り、トーマス・ドゥーランに魂のために祈り、そして最後には自分自身のために祈った。あとになると自分が教会に入ったことを思い出すことができなかった。それはまさに導かれたかのようだった。しかし、そこを立ち去り、道路に戻っていることに気づいた時、彼は何をしなければいけないかちゃんとわかっていた。


「大使」

心から夢の続きが消え、突然、やましい気持でブレナンは目を覚ました。首を寝違えていた。額においていた彼の手には感覚がなかった。ブレナンは起き上がってインターホンのボタンをパチンとならして押し、呼び出しに不平をいった。
「要旨報告書です」
「ありがとう」
ブレナンの声は眠そうでまだ不鮮明だった。
「運んどいてくれないか」
彼はあくびをして、バスルームに行き顔に水をはねらせ目をこすった。その週は3回も彼はデスクで眠りに落ちていた。これはとてもまずい。マーガレットの性欲をどうにかしなくては・・・。
 「ウォッカが精神安定剤か・・・」と彼は鏡の中の自分に言ってにやりと笑った。まだ彼は考えていた。それは彼にとっていい問題だった。

要旨報告書はいつものように憂鬱な知識で構成されいる国務省が作ったものだった。ブレナンは慎重にそれらを見て、外務省の協議会への招待を確認しながらメモをピックアップした。すべてが終わった時に果たして数日間休暇がとれるだろうかとぼんやりと考えた。自分には休息が必要だと感じた。けれどどこで?
良心のある者ならどこかへ行くことができるわけがないとブレナンは独り言を言った。

世界の半分は人権を、また同じように実刑判決あるいは銃殺隊をもたらしている反対派の行動を冗談として扱っているように思われた。 ラテンアメリカの国々、ギリシャとトルコの大部分を除外して。 アラブの国は中世に逆戻りしていて原理主義になるか、あるいは秘密警察軍隊と過酷な権力による逮捕という最悪な西洋の方法を受け入れていた。イタリアと同じようにスペインは再びファシズムを弄んでいた。アフリカ大陸は敵対派閥が乱雑だった。カリブ海とインド洋の島々は独裁国の下かギャングによって支配された。
安定したヨーロッパの国々でさえ誘拐と殺人を喜んでする血に飢えた世代の青年を大量に生んでいたため、彼はアメリカの外交官として朝から晩までガードを必要としていた。ブレナンはため息をついた。まるで人間が触れたところはすべてどこも汚染されているように思われ、すべてのニュースが悪いニュースで解決がない問題のように思えた。

ブレナンは思った。もし神が本当に死んでいたら、悪魔が確かに生きていて元気でぴんぴんしているだろう。ブレナンはグローブナー広場の中に注目した。デモ参加者のグループがプラカードをもって円になって行進していた。広場でデモのない日は思い出すことができなかった。
 もっと年がいった外交官たちはベトナム戦争のひどい日々以来そのようなデモは観たことがないと言っていたが、少なくとも、全力を注いだ抗議、ある特定の状態に対してのデモだった。 今やあらゆる種類の苦情と宿命の預言者の世代があった。広場で白い発光性の骨を描いた黒い麻のシースルーの衣装を着た集団がいた。彼らを見ると同時に骨の1つが曲がって直接こちらを見たような気がした100ヤードの距離から握りこぶしが彼に振られた。



ブレナンはため息をついて、窓から離れた。 泣き叫ぶ声と嘆きにはうんざりで楽天主義にあこがれたれども内心それも問題があること知っていた。 彼らと一緒に口論することは難しかった。世界は希望をもてるものではなく、だからマーガレットは赤ん坊が欲しいとは けして言おうとしなかった。ブレナンは自分の手帳をチェックした。ヒルトンでの英米貿易連合と一のカクテルパーティがった。 うまくいけば9時までには家で夕食がとれるだろう。 彼は、実業家たちに何と言おうかと考えるために強制的に頭から憂鬱を追い出し、バスルームに行きシャワーカーテンを引いた。 少なくとも正式のスピーチがあるはずもなく、単に貿易と特別な関係を通して平和について2言3言だけだ。熱中して聞けるといいが・・・。



 会議室はすでにアメリカと英国の旗と連合のロゴで飾られていた。ブレナンは精通した目で紹介されると同時に襟の折り返しのバッヂの上の名前に注意しつつ、握手をしながら種々のベンチャー企業の激励を申し出ながら30分の間かわるがわる話をした。それは基本的には正式で抑制された男らしい儀式だった。しかしブレナンはぼんやりと2時間くらいたつとカクテルがまわってくるだろう、お偉い人間がいたずらをたくらんでいるのだろうかと思っていた。

顔と声が不明瞭にぼやけ気がつくと小さい休憩所で突然一人になっていた。ウェイターが飲み物のトレイと一緒に近づいてきた。ブレナンは飲みのもを1つ取りそれをすすっていると、誰か自分の後ろにいるに気がついた。彼は神経質そうに手を伸ばす小さい男の方を向いた。
「大使、ちょっとお話していいですか?」
ブレナンはイリノイ訛りだなと思った。
「フィンさん」と男の手をにぎりながら言った。
他のものと異なり、男は名前の下に会社名がなかった。
ブレナンの心を読んでいるかのようにフィンは肩をすくめた。
「私は組織のメンバーではありません」
男が申し訳なさそうに言った。
「本当は私はここにいるべきじゃないんですが、友人の友人に招待されたので」
男はブレナンの顔にしかめ面がすっと飛び交ったのを見た。
「それはかまわない」
とブレナンは言った。
「しっかり警備員にチェックされました。私は歴史家で骨董品屋のディーラーなんです。」
「へえ」とブレナンは言った。
「私はしばらくの間あなたに会おうとしていたが、アポイントの要請をあなたのオフィスを通したら受け入れられると思えなかったのでね」
「すなまいね、フィン。でももし私が現れたものみんなに会ってたら・・・」
「まったくです。分かってますが、ほんの数分でいいから」
男ははブレナンの腕を取って彼をくぼみに引き込んだ。
「私は今晩あなたの家にある包みを配達されるようしました。私が頼みたいことはそれを丁寧に読んで欲しいということだけです」
「もちろん」ブレナンはあくびを抑えながら言った。
「お願いだ。それを読見終わってもナンセンスだと捨ててしまわないでほしい」
ブレナンは眉をひそめた。何かを思い出させられ、彼はフィンが続けるまでまったく会話ができなかった
「読もうとしているものはそのほとんどが正気じゃないと思われるだろう。たしかにいくらか正気じゃない。この段階で言えることはこの件に関与した2人の人物が・・・」彼は間を置いた。
「死んだ。そのうちの一人はシカゴの私の司祭だった」
「ああ、そう・・・」
ブレナンは立ち去ろうとしたが、年取ったその男は彼の腕をつかみ
「ブレナンさん、私の司祭の死体があなたの先祖の一人の墓で発見されたんだ」
ブレナンは微笑して彼の腕を取り外そうとした。
「その事実から始めてくれ」とフィンがせっぱつまってささやいた。
「ダミアン・ソーンについて話しているんです」
ブレナンは彼の腕をはずした。
「なぜダミアン・ソーンの棺の中に岩の山があるのか、あなた自身に聞いてみてくれないか」
ブレナンは後ずさりし、フィンはその後に従った。
「ブレナンさん、私は精神異常者ではない。私がこれで得られるものは何もない。私も同じくおびえている信心深い臆病者だ」
補佐がブレナンが当惑しているのを見て近づいてきた。
「ブレンナンさん、私の頼みをきいてくれますか?ただ小包の内容を完全に読んで」
ブレナンは心配そうで懇願するような表情を見下ろした。フィンは微笑した。
「ありがとう、大使」
男は補佐の注意を無視して、肩の荷が下りたかのように満足そうに微笑しながら立ち去った。


ちょっとおかしい文章があるけどいつか直しますので・・・(汗)

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